昨年、ある有名人の子供について、DNA鑑定を実施したところ、99.99%(生物学的)父親ではないという事実が判明した件が話題となりました。この件では、親子関係不存在確認調停が申し立てられたそうですが、結論から言えば、嫡出推定が及ぶのであれば、法律上の父子関係がなくなることはありません(追記:この件は、民法772条2項の嫡出推定が及ばず、父子関係が否定されました。)。

このことを、最高裁平成26年7月17日(第一小法廷)判決も明らかにしています。平たく言えば、婚姻している女性に生まれた子供であって、1年(嫡出否認の訴えの出訴期間)を経過した場合には、たとえ夫がその子の「生物学的父親」ではないとしても、法律上の「父」となってしまい、これをDNA鑑定によっても覆すことは出来ないということです。

こうした発想に対しては、おそらくホメーロスであれば激しく反対するだろうと思われます。というのも、古代ギリシア(正確には「オデュッセウス」の時代のギリシア)において子供の身分を決定するのは父親の地位であり、「生物学的父親」が貴族であれば、母親が奴隷であっても子供は貴族の身分を獲得していたからです。このため、オデュッセウスは、自分の素性をエウマイオスから隠そうとするでっち上げの話の中で、「父親は裕福なクレタ人、母親は『買ってきた妾』」と述べたのです(モーゼス・フィンリー「オデュッセウスの世界」(岩波文庫)103頁)。

これに対して、古代ギリシアのような身分制を採用していない現代の日本では、「社会学的父親」を採用しても問題はないではないかという見解があります。

ところが、実際には、かなり問題があります。