山口真由さんという人物に興味を抱いたので、次に、「いいエリート、わるいエリート」(新潮新書)という本を買って読んでみました。するとそこには、山口さんが社会人になって受けた不可思議な教育法が描かれていました。以下、少し長いですが引用してみます(p108-109)。

このかたはいつも、私に妙な課題を与えました。

「山口、小豆は赤いよね?」

真夜中に月餅を食べながら、彼はこう私に話しかけます。

「はい」

「でもさ、月餅の中のこしあんは黒いよね」

「はい……」

この時点で、どことなく嫌な予感がします。

「なぜ赤い小豆から月餅の黒いこしあんができるのか、今すぐ調べてくれないか」

私はたぶん、いやーな顔をしていたはずです。

「小豆の表面は赤いんですけど、中は黒かったりするのではないでしょうか」

面倒だし、仕事に関係ないし、サービス残業なんでもうこりごりなので、調べもせずに答えました。すると、上司はパソコンの画面を見ながら、こう言います。

「山口、この画面、ちょっと見てみて。ほら、小豆の中身の画像があった。小豆って言うのは、どうやら白いんだね。小豆の中は黒ではなくて白だ。なのに、なぜ黒くなるんだろう。不思議だとは思わないかい? どういうことなのか、調べてほしい」

頻繁にそういうやりとりをくり返しました。