金融機関等による貸付には、短期のものと長期のものの2種類があります。前者は、かつて「手形貸付」や「当座貸越」、「短コロ」などと呼ばれていた、契約期間が半年~1年以内の短期継続融資で、基本的に元本返済がなく、利息のみを返済すればよいことから、中小企業や個人事業主に広く利用されていました。ところが、「短コロ」に対し、金融庁が平成14年の「金融検査マニュアル」で厳しい見解を示したため、銀行業界は、「短期融資すべてが不良債権に分類される」と受け止め、返済が必要な長期貸付(証書を取り交わす、契約期間1年超の融資)に置き換わっていきました。

その後、平成25年の「金融検査マニュアル」の改訂により、短期貸付のメリットが見直されるようになったようですが、ひとたび「疑似資本」扱いされた「短コロ」が完全復活したは言えない状況とみられ、融資の主流は、おそらく現在でも長期貸付となっているのではないかと思われます。

ところで、私は、ある金融機関で長期貸付の業務を6年間行っていたことがあり、そのときの経験から、日本における長期貸付の審査手法が、基本的に旧日本興業銀行(現在のみずほ銀行の前身の一つ)のそれに準拠していることを知りました。日本における長期貸付の草分けは、「興銀(こうぎん)」なのです。そのため、金融機関の審査担当者にとって、旧興銀出身者による企業審査の書籍は必読書と言って良いものであり、私も何冊か読んで勉強していました。

もっとも、この種の本を読むと、前に指摘した「与信を行う側のスタンスの問題」、すなわち、金融機関等が、「自らの『組織存続』という観点から信用を供与する相手を選別し、また、信用供与の可否を判断する」という姿勢が信用の機能不全を招いているという問題の存在が浮き彫りになってしまいます。