サラリーマンになりたてのころ、「営業一筋25年」を売り物にしていた上司に連れられて顧客訪問を行いました。その上司は、営業についてはパーフェクトを求める人で、社内でも1、2を争う営業成績だったと記憶しています。 訪問先は駅からやや遠いため、タクシーで向かったのですが、停車位置を50メートルほど間違えて行き過ぎてしまい、戻る羽目になりました。

そこですかさず上司が一言、「君は、仕事における緊張感が足りない。君の不注意で、ワンメーター分のタクシー料金という損害を会社に与えたのだ」と叱責しました。 当時は、「誰にだって間違いはあるし、この程度のミスでそんなに叱らなくてもいいのに」と内心で反発していましたが、しばらくたって、私の方が間違っていたことに気づきました。

上司が言わんとしていたのは、おそらく、「仕事における緊張感」の欠如は、「心構え」の甘さからくるのだということだったと思います。実際私は、些細な・不可避的なミスも、元をたどればこのような「心構え」の甘さ(要するに手抜き・油断)が原因だということを、その後の職業生活において何度も経験しました。

もっとも、その上司は退職してしばらくして亡くなってしまいましたので、今となっては感謝の言葉を伝えることができません。