① それは、1人の個人が基となって形成される。

② その中核には、どんな場合でも、1人の個人が存在している。

①は、初めは1人の個人から出発したものが団体を形成し、組織・法人となるという、発生機序に関するものであり、②は、組織・法人の中核には1人の個人が存在するという、組織・法人の属性に関するものです。

①の意味は、企業について考えると分かりやすいでしょう。1人の個人が企業を営む場合、それは「個人企業」と呼ばれますが、これに他の個人が加われば「組合企業」となり、さらに「合資会社」や「合名会社」、ひいては「株式会社」になるというのが、典型的な「法人成り」の流れです(桜井久勝・須田一幸「財務会計・入門(第10版補訂)」p48)。

これに対して、②の意味では、組織・法人の構成員の数の多寡にかかわらず、組織・法人は、結局のところ1人の個人によって代表され、場合によっては、この個人を中心として一体的な作用を営むということになります。具体的に言うと、例えば、「イエ」においては「当主」が存在し、しかも、構成員は、家族性原理の下、「当主」を筆頭とする「一心同体」の集団として活動することが要請されます。

他方、「カイシャ」においては、代表者(但し、複数のこともある。)が存在する点は「イエ」と共通していますが、家族性原理ではなく「実力」が指導原理となっている組織(木庭先生のタームでいえば、「(内部)軍事化」を完了した「無分節体」ということになろうかと思います。)、あるいは、家族性原理と「実力」とが指導原理となっている組織もあります。このような、軍隊的な組織や軍隊的であると同時に家族的でもあるような組織については、例えば、ブラック企業などを想像するとよいでしょう。