さて、一言で「信用」といっても、それには様々なものが考えられますが、さし当たり、商人を念頭に考えると、一般には、企業間信用(金融機関以外の事業会社相互間の商品・サービスの取引において現金による即時決済ではなく、掛売り、手形決済などの手段で買い手企業の代金支払いを一時的に繰り延べて一定期間後に代金の支払いが行われ、その間は企業相互間で信用が授受される金融取引)と金融機関借入等に大別されるようです。

企業間信用について言えば、「下請けイジメ」のような悪質事案は後を絶ちませんし、企業間信用の象徴とも言うべき手形は激減しており、かといって電子決済(でんさい)も頭打ちのようです(https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20190423_01.html)。のみならず、「原種の委任」(代理権の授与はおろか代理の効果をも排除する形式の委任)は、本来これを活用することが期待されている商社等が殆ど利用せず、機能不全に陥っています(木庭顕「新版 現代日本法へのカタバシス」p186~)。

他方、金融機関借入等については、既にバブル期から大きな問題が発覚していました。それは、与信における透明性の欠如と、与信を行う側のスタンスの問題です。前者については、バブル期における大手銀行と反社会的勢力との癒着の問題や、拓銀、長銀、日債銀などの経営破綻と住専問題などを思い出すとよいでしょう。もっとも、私がそれよりも重大だと考えるのは、後者の問題です。

これは、簡単に言うと、金融機関等が、「自らの『組織存続』という観点から信用を供与する相手を選別し、また、信用供与の可否を判断する」という姿勢が信用の機能不全を招いているという問題を指します。