③ 「新型コロナウイルス禍の影響により、当社の資金繰りが急激に悪化し、会社存続の為の組織縮小に伴い、就業規則●●条✕✕項に基づく解雇が必要となり、・・・非正規雇用の従業員を優先的に整理解雇の対象とすることとした。」
これは、いわゆる「コロナ解雇」を行う会社が訴訟等において行う典型的な主張の例です。「会社存続」(の為)というキーワードが注目されますが、このフレーズからは、「非正規雇用の従業員」の犠牲のもとに、集団としてのカイシャ(具体的には経営者/経営陣と正社員)の利益を守ることが、「コロナ解雇」の目的であることが分かります。
このことから分かるとおり、「コロナ解雇」は、「犠牲強要」の典型例の一つなのですが、被解雇者の約半数が非正規雇用労働者であることが注目されます(コロナ解雇、約半数が非正規労働者 厚労省集計)。現在、若年層の二人に一人は非正規雇用労働者ですから(森岡孝二「過労死は何を告発しているか」p235~)、若者が「犠牲強要」の中心的なターゲットとなっていることは明らかで、かつ、その中でも女性の割合が高いことが指摘されています。かつての「イエ」になぞらえて言えば、「コロナ解雇」は、「イエの構成員の食い扶持を確保するため、(イエの構成員ではない)奉公人の女中に暇をやる」現象と表現することが出来るかもしれません(「大経師昔暦」の玉を思い出すとよいでしょう。)。
他方、正社員は安泰かと言えば、決してそうではありません。苛酷な競争にさらされている業界では、(疑似)軍事化イニシエーションを多用するカイシャがいまだに沢山あり、これをもろに受けた新人・若手の正社員が、うつ病などの精神疾患を発症することがあります。既に2008年度頃から、精神障害によって過労自殺に至る20代前半の若者の増加が目立ってきていますが(前掲・p20~)、裁判例などを見る限り、精神疾患の発症については(疑似)軍事化イニシエーションの影響が大きいと考えられます。コロナウィルス問題による景況の悪化・競争の激化を受けて、この傾向はさらに進むと思われますし、また、整理解雇の対象が正社員全般に拡大していくことも想定されます。
このように、「コロナ解雇」は、労働者(特に若者や女性)を「交換可能」な存在(モノ)とみなす思考をその基盤としているように思われます。