これまでの考察をまとめると、怒りの強さは、差し当たり、① 自己愛の強さ、② 自己愛の傷つき易さ、 ③ その人が遭遇した出来事の衝撃 といった要因によって定まるといってよいように思われます。

例えば、山口真由さんの「いいエリート、わるいエリート」(p134)には、非常に優秀で順調に出世街道を歩んでいたある官僚が、「政務官秘書官」に異動となったこと(本人は左遷と受け止めた可能性があります。)に傷ついたのか、ネットサーフィンをしていた部下らを必要以上に厳しく叱責したため、人事から呼ばれて指導を受け、今度はそのことに強い不満を抱いて退職に至った事例が挙げられています。

もっとも、パワハラやモラハラの加害者の場合、上にあげた3つの要因からは説明するのが困難なタイミングで、あるいは、尋常ではない強さの怒りを表出することが稀ではありません。それはなぜでしょうか。