法人は、「巨人」化することだけが問題なのではありません。法人は、「小人」(Dwarf:ドワーフ)化することも比較的容易に出来ます。例えば、消費者相談を担当していると、次のような事案に遭遇することがあります。

・株式会社Aは、一般社団法人Bに基金を拠出する。

・Bは、Aから提供を受けた資金を出資して合同会社C(いわゆるファンド)を設立する(Cの代表社員はB)。

・Cは、B(劣後出資者)からの出資金(20%)に加え、一般投資家(優先出資者)との間で匿名組合契約を締結して出資金(80%)を集める。

・Cは、集めた資金によって、Aが選定する不動産(収益物件)を取得する。

・Cは、不動産の管理・運営を株式会社Dに委託し、その対価として売上げの約50%をDに支払う。

・Cは、一般投資家(優先出資者)に対し、12%の配当を行う。

・一般投資家とCとの間の匿名組合契約の期間は3年で、満期までの間に他のファンドに転売するか、市場で売却して、出資金を償還する。

これは、いわゆる「GK-TKスキーム」(合同会社-匿名組合)と呼ばれるものの一種で、ファンド終了時に不動産が取得価額以上で売れない場合には元本欠損が生じることから、やがては破綻することが必至なスキームと言えます。案の定、その後Cは自転車操業に陥った挙句、一般投資家への配当を維持することが出来なくなり、倒産に至るのですが、この間、Cが所有している不動産にはいつの間にか抵当権が設定されており、一般投資家は出資金の償還を受けられない上、勝訴判決を得ても、Cの財産に強制執行を行って債権の満足を受けることは出来ないということになります。

上のスキームのC(ファンド)とB(Cの代表社員)とは、いずれも社員1名で構成される法人で、いわば「小人」化した法人ですが、被告らの答弁書には、「合同会社であるCは、『倒産隔離』を実現するためのSPC(特別目的会社)・・・であって、資産を保有するための『ハコ』としての役割しかそもそも期待されていない。」とありました。ここでいう「倒産隔離」の真の意味は、スキームの中心にC(SPC)を据え、これを一般投資家向けの契約当事者とし、出資金で取得した資産を保有させること、また、AとCとの間にBを介在させることによって、スキームが破綻した場合であっても、他の法人(特にAとD)や関係する個人には可能な限り強制執行等が行われないようにするという点にあるとみられます。要するに、ここでは法人が藁人形として用いられているわけです。