海兵隊が世界最強の軍隊である理由は、私見によれば、教会法における「法人」理論の転用にあります。その証拠に、ハートマン軍曹の次の台詞を見てみましょう。

So, you can give your heart to Jesus … but your ass belongs to the Corps.

(お前らの心はイエスに捧げてもいい。・・・だが、お前らのケツは海兵隊のものである。)

何気ない台詞のようですが、これは、奇妙なことに、13世紀の教会法学における「法人」の生成、すなわち、天上にある「キリストの身体」に対応し地上にはその記号としての「(個別)教会」が生まれたという発想(個人と組織・法人(12))に類似しています。「天上にはイエス(Jesus)、地上には海兵隊(the Corps)」というわけで、海兵隊は(個別)教会に代わる位置づけを与えられています。そういえば、大統領就任式において、海兵隊ブラスバンドは、聖歌隊と並ぶ役割を演じています。

また、このように、海兵隊と(個別)教会とをパラレルなものとして捉えると、① 海兵隊の「実力」の差別化、② 海兵隊の「永続性」 という発想が自ずから導き出されます。これらについても、ハートマン軍曹がはっきりと語っています。

Chaplain Charlie will tell you … about how the free world will conquer communism … with the aid of God and a few Marines.

(チャーリー牧師は、お前たちに、自由主義陣営が、神のご加護と少数の海兵隊の力によって、いかにして共産主義に打ち克つのかを教えてくれるだろう。)

 このように、海兵隊と共産主義国の軍隊との間では、同じ実力(軍事力)であっても、「神のご加護」の有無によって明確に差別化が図られています。そして、最後に海兵隊の「永続性」が謳われるのですが、この「永続性」は、帝国陸軍のそれとは明らかに次元が違います。「神の息子の身体の記号」の「永続性」は、神に由来するものだからです。

Always remember this, Marines die that’s what we’re here for, but the Marine Corps lives forever, and that means you live forever!

(このことをいつも心しておけ。海兵は死ぬ。それが海兵の運命でもある。だが、海兵隊は永遠に生きる。つまり、お前たちも永遠に生きるのだ!)